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Channel: 津々堂のたわごと日録
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■大つごもり

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 月の最期を「晦日=みそか」という。一年の最後、十二月の晦日は特別に「大晦日」、「おおみそか」の方がなじみ深いが「大つごもり」ともいう。
資料によると陰暦の月末は、月が隠れることが多く「月隠=つきがくれ」と言ったものが、音変化して「つごもり」となったとする。

今年は年賀状も早めに出したし、なんとなく余裕の年末である。奥方は忙しくしているが、わたしはというと散歩とブログと読書で一日を過ごしている。
さて今日は何を読もうかと本棚を眺めているうちに、私にとっては年末恒例の樋口一葉の「大つごもり」を読もうと、岩波の薄っぺらい一冊を思い出した。
古い本で岩波特有の色合いが、ますます茶色く変色して少々不衛生にも思えるほどだ。
頁を開いて一気呵成に詠みあげた。文語体が味わい深い。
主人公のお峰は両親を亡くし、幼い弟を伯父・伯母に預けて自らは奉公に出ている。伯父も伯母も弟によくしてくれるが、伯父は病で寝込んでしまった。
8歳の弟は学校から帰ると、シジミ売りに精を出すが一家の生活は厳しい。暮れには借金の返済日が迫る中、お峰は安請け合いをしてしまう。
そして、当日弟がその金を受け取りにやってくる。切羽詰まったお峰は、とうとう主家の大事なお金に手を付けてしまうという話である。
「人情咄」の世界だが、意外な顛末も驚かされる。
伯父の家が「小石川」であったり、主家の沢山の貸家が「白金臺町」にあったり、そんな設定も愉快である。

毎年暮れになると必ず読んでいるが、年を重ねたせいか、少々うるうる状態の自分がある。
青空文庫に収蔵されているから、是非お読みいただきたい。https://www.aozora.gr.jp/cards/000064/files/388_15295.html

 


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